自分と友だちの気持ちを考える。心が育つ絵本5選

絵本

もうすぐ年度末、そして新年度を迎えます。

慣れ親しんだ友だちと離れたり、新しい友だちとの出会ったりする季節ですね。

本記事では【自分と友だちの気持ちを考える。心が育つ絵本】をテーマにして、司書資格を持つ保育士、弓子が、今子どもに読み聞かせたい絵本を5冊厳選しました。

友だちの気持ちを知りたくなった時、自分の気持ちが分からなくなった時。

そんな時の読み聞かせの参考にしてみてくださいね。

相手と自分の気持ちを考える。心が育つ絵本5選

とんかちくんとのこぎりくん(おすすめの対象年齢・3歳~)

中川ひろたか
渡辺有一
出版社学習研究社
出版年2007年

嫌い=悪ではないよ。

3歳からおすすめ
・嫌な子、苦手な子はいる
・嫌な子=悪ではない
・可愛らしい絵がいい

ポイント①嫌な子、苦手な子はいる

この絵本には2匹の嫌われ者が登場します。

1匹はとんかちくん。

あたまがとんかちのさめです。

もう1匹はのこぎりくん。

はながのこぎりのさめです。

あたりかまわず何でもかんでも壊してしまうので、みんなから嫌われています。

結果それぞれひとりぼっちになってしまいました。

園で過ごしていると、苦手な子はきっといると思います。

意地悪する子や叩いてくる子だっています。

もしかしたら、自分がその乱暴しがちな子、孤立しがちな子かもしれません。

子ども達がそれぞれの立場で共感できるところがいいと思いました。

ポイント②嫌な子=悪ではない

3歳児や4歳児は一方的な見方をしています。

例えば乱暴な子がいるとします。

5歳児ぐらいになると、○○さんは暴力的だけど優しいところもあって、いいところもあるよね、と思えます。

でも3歳児4歳児にとっては乱暴な子と思うだけです。

そいういう一方的な見方をする3歳児や4歳児にこの絵本をおすすめしたいです!

とんかちくんとのこぎりくんはある日、年とったかめに誘われて竜宮城の新設を手伝います。

するとこの二人が大活躍!!

格好良く木を切ってとんとんと組み立てていきます。

乙姫様に褒められてごちそうなんかいただいちゃったりします。

この絵本を見て、友だちの見方が少し変わって見えたらいいな、と思いました。

気持ちをコントロールできなくて暴力的になってしまう子も、自分にもできることがきっとあると感じてもらえたらいいな、と思います。

ポイント③可愛らしい絵がいい

渡辺有一さんの絵は画面を軽やかに見せてくれます。

簡単に描いたような線が軽快でポップ!

たくさん登場する海の生きものたちはどれもとっても可愛いですよ!

表情も生き生きとしていて元気いっぱいです。

親しみやすい明るい絵は子どもたちも大好きだと思います!

けんかのきもち(おすすめの対象年齢・4歳~)

柴田愛子
伊藤秀男
出版社ポプラ社
出版年2001年

けんかのきもちが伝わってきます

4歳からおすすめ
・けんかの気持ちを丁寧に描いている
・切り替わり方がリアル
・迫力のある絵が気持ちを伝えてくれる

ポイント①けんかのきもちを丁寧に描いている

主人公の「たい」は「あそび島」というところで元気に遊ぶ男の子です。

ある日、一番のともだちの「こうた」とすっごいけんかをしました。

理由は描かれていないのでどちらが悪いかは分かりません。

たいが、

 「もういやだ!」

というと、

 「おわりにする!」

とこうたがいって、けんかは終わりました。

その後たいはしりもちをついて泣いて悔しがりました。

泣きながら家に走って帰るとお母さんにくっついて更に泣きました。

 ないても ないても なきたいきもちが 

 なくらならない。

 (中略)

 なんでだよ!なんでだよ!なんでだよ!

と怒りながら泣きます。

泣いても怒っても収まらない悔しい気持ちがとても伝わってくる場面。

けんかのきもちを丁寧に描いていて、子どもも共感しやすいと思いました。

ポイント②切り替わり方がリアル

するとこうたが家に来て、「ごめんな!」と謝ってくれました。

でもたいの気持ちは収まりませんでした。

 なんでだよ!なんでだよ!なんでだよ!

 なんで あやまるんだよ!

 (ページをめくる)

 なみだが でた。

 いそいで げんかんのとを しめた。

 そんなこと いうな。

 けんかのきもちは おわってない!

 「うわぁ~ うわぁ~ うわぁ~」

私は仕事で子どものけんかの仲裁をたくさんしてきました。

お互いの気持ちを受け止めてどうしたらよかったかを伝えてみることで、相手の気持ちに気づけるようにしたり、必要に応じて謝れるように促したりしています。

でもこのようにこころが強く大きく動かされたことは、たぶん、すぐ解決しようとしても無理なんですよね。

こうの場合、時間が解決してくれました。

すぐ割り切れない大切な思いが、子どもにもあります。

この絵本はそのことを教えてくれています。

ポイント③迫力のある絵が気持ちを伝えてくれる

絵本ではこうの表情を大きくしっかり描いています。

こうが悔しくって泣き出すところはとても迫力があって本当に悔しい気持ちが伝わりますし、

畳の上に横たわって泣きながら天井をにらみつけるところも、納得できないこうの強い思いを感じられます。

 けんかのきもちが おわった

と言う場面では、画面に顔が収まりきらないほどの大きさのこうの笑顔が描かれていました。

気持ちがしっかり伝わる絵が子どもにも分かりやすくてとてもいいと思います。

アレクサンダとぜんまいねずみーともだちをみつけたねずみのはなしー(おすすめの対象年齢・5歳~)

レオ=レオニ
谷川俊太郎
出版社好学社
出版年1975年

友だちを思う気持ちに気づく

5歳からおすすめ
・はじめての友だち
・自分よりも友だちを優先する
・不思議な絵の世界へ

ポイント①はじめてのともだち

この絵本の主人公は「アレクサンダ」というねずみです。

パンを食べようとして見つかると、悲鳴を上げられたり、ほうきで追いかけられたりしています。

そんな中、アレクサンダは、ぜんまいねずみのウイリーと出会います。

ウイリーはアニーのお気に入りのおもちゃです。

そして1匹のねずみと1匹のねずみのおもちゃは意気投合して友だちになりました。

二人はとても仲良しです。

でもアレクサンダはこんな風にも思っていました。

 けれど、かくれがの くらやみの

 なかで ひとりぼっちの とき、

 アレクサンダは ウイリーを 

 うらやんだ。

 「ああ!」と かれは 

 ためいきを ついた。

 「ぼくも ウイリーみたいな 

  ぜんまいねずみに なって、

  みんなに ちやほや 

  かわいがられて みたいなぁ」

友だちができることで、知らなかった気持ちに気づくことがあります。

アレクサンダはウイリーと友だちになってウイリーのことを知ったから、うらやんでいる自分の気持ちにも気づくことになりました。

ポイント②自分よりも友だちを優先する

ある日ウイリーはアレクサンダに、生きものを他の生きものに変えることのできる魔法のとかげがいることを聞きます。

アレクサンダはこう思いました。

 「つまり、」アレクサンダは いった,

 「ぼくを きみみたいな ぜんまいねずみに

  かえられるって いうの?」

こうしてアレクサンダは願いをかなえるためにとかげのもとへ行き、とかげが要求した「むらさきのこいし」を探し始めます。

そんな中、ウィリーは”古いおもちゃ”になって箱に捨てられてしまいました。

驚き、悲しんだアレクサンダ・・・

そんなアレクサンダの前には”むらさきのこいし”が転がっていました。

このときアレクサンダがしたお願い事とは――――。

アレクサンダは最初は自分のことしか考えていなかったのに、徐々に変化が生まれて、友だちのウイリーのことも考えるようになりました。

願い事は想像通り、最初とは違っていることでしょう。

友だちがいたからこそ、深く考え、感情が動かされました。

この絵本を読むことで、友だちのことを考えるきっかけになってくいれたらいいな、と思います。

ポイント③不思議な絵の世界へ

レオ=レオニさんはイラストレーターでもあり、グラフィックデザイナーでもありました。

この絵本の絵の模様はグラフィックで描かれていて、そこがとても印象的です。

紙をやぶいたような表現もあって個性的です。

2匹のねずみたちの表情もいいですよ!

にや・・・っとした顔が特にいいです(笑)

名作ですので是非読んでみてくださいね。

きみ、なにがすき?(おすすめの対象年齢・5歳~)

はせがわさとみ
出版社あかね書房
出版年2017年

自分の気持ちにも気づける

5歳からおすすめ
・自然と感情移入できる
・自分の気持ちに気づくていく
・繰り返しでわかりやすいストーリー

ポイント①自然と感情移入できる

このお話はこんな風に始まります。

 もりのおくに いっぴきの あなぐまが

 すんでいます。

 あるひ、あなぐまは かんがえました。

 「ぼくのには、くさぼうぼうで、

  なんにもないや。

  この にわに なにか つくりたいなあ」

そのうちに”とてもいいかんがえ”を思いつきます。

 「そうだ、はたけは どうだろう。

  おいしいものを そだててさ、

  どっさりとれたら りょうりして、

  ともだちを しょうたいするんだよ」

あなぐまは友だちが大好きなんですね

こうしてあなぐまは畑に植えるものを考えました。

「なかよしのこぶたにはじゃがいもがいいかな」とか。

ところがそれらの野菜や果物は、あなぐまが作らなくてももう十分足りているようでした。

なんだか切ない・・・

友だちが大好きで一生懸命考えるのに上手くいかなくて、何度考えてもだめで。

一生懸命なあなぐまがけなげで切なくて自然と感情移入できるところがおすすめです。

ポイント②自分の気持ちに気づいていく

あなぐまは部屋の隅で丸くなってこう言いました。

 「せっかく いいもの つくろうと 

  おもったのに。

 (中略)

 ぼくの なかよしの すきなものは、

 ぜんぶ だめ。

 ぼくの にわで、

 なにつくったら いいんだい?

 なにしたら、きみ うれしいんだい?」

するとはりねずみはこう言いました。

「そりゃあ あなぐま、

 きみの すきなものを なんでも。

 (中略)」

こう言われてあなぐまは答えました。

「へえ、 そうなの?

 ぼくのすきなもの?

 そうか・・・・・・、そうだよね。

 ありがとう。」

あなぐまが一番作りたいものとは――――?

あなぐまが、友だちのことを考えるあまり見落としていた、自分の気持ちに気づいた場面です。

友だちとの気持ちと同じくらい、自分の気持ちを大切にしていいんだよ。

大切にしてね。

そんなメッセージが込められていると感じました。

たくさんの子どもに届いてほしいです。

ポイント③繰り返しでわかりやすいストーリー

このお話はお話が繰り返されながら少しずつ変化して展開しています。

分かりやすいので、絵本がちょっと苦手という子にも聞いてもらえると思います。

イラストもあたたかみがあってとても親しみがもてます。

ぜひ読んでみてくださいね。

小さなピスケのはじめての友だち(おすすめの対象年齢・6歳~)

二木真希子
出版社復刊ドットコム
出版年2018年

葛藤に寄り添ってくれる絵本です

6歳からおすすめ
・ピスケに自然と感情移入できる
・言葉が通じなくても、友だちになれるよ。
・絵本の完成度が高い

ポイント①ピスケに自然と感情移入できる。

このお話はピスケが空き家に住みはじめてから独り立ちするまでの物語です。

必要な物を買うために干した実を物々交換してもらおうとしますが、需要がない実でいい値段はつけてもらえませんでした。

そんな中ピスケはきれいなもようのガラスを見つけました。

 値段を聞いて、目玉が飛び出した。

 でも、やっぱり欲しい。

 「おじさん、これを自分のまどにはめられたら、

  一人前って言えるかしら。」

 「おおよ。そりゃ一人前だ。

  それだけのかせぎがあるってことはね。」

こうしてピスケは今年中にあのガラスを自宅のまどにはめよう!と目標を立てました。

でも両親にこれまでのこと、これからのことを手紙に書くときには

 「ほんとにここで、

  ちゃんとやっていけるのかなあ・・・・・・。」

と不安にもなりました。

ピスケの生活は私たちと同じです。

新生活にワクワクしたり不安になったり、いいことがあったら悪いことがあって、嬉しいことがあったのにちょっとしたことでなくしてしまったり・・・期待していなかったら嬉しいことがあったり。

やるせない思いも経験しました。

でもたくさん泣きわめいたら気分がすっかり晴れました。

読んでいると自然とピスケの気持ちになって、色々な経験ができる絵本です。

ポイント②言葉が通じなくても、友だちになれるよ。

表題にあるように、ピスケにはじめての友だちができました。

巣から落ちたカラスです。

ピスケは

 「だって、

  わたしのはじめてのお客さまだもの。」

と言って、お茶におさとうを三杯入れて差し出しました。

それから巣に戻してあげました。

(母ガラスに驚いて落ちてけがもしましたが)

すると大きくなったカラスが遊びに来てくれたんです。

 ピスケは、前と同じにお茶を入れた。

 カラスも、

 前と同じに大きく口を開けて飲んだ。 

 カラスのくちばしはすっかり太くなり、

 黒光りして、これはかなり怖かった。

 でも、上を向いてお茶を飲みくだすとき、

 カラスのまぶたがくりっと動くのは、

 とてもおもしろかった。

 カラスはひとしきり温まって満足すると、

 木の上に帰って行った。

こうしてカラスは頻繁にピスケの家に来るようになり、二人は友だちになったんです。

それから色々ありました。

カラスを怒らせてしまったり、一生懸命頑張ったことが上手くいかなくて泣いてしまったり・・・

そんなときにあらわれたのは、やっぱりあのカラスでした。

 今度はピスケは、

 こうして友だちのそばにいるだけで

 うれしかった。

 「しずか・・・・・・。」

 風の音、雨の音、カラスの息づかい、

 カラスの心ぞうの音。

 小さいのは、ピスケの心ぞうの音・・・・・・。

2匹は言葉を交わすことはありません。

ただ、友だちの側にいるだけで嬉しくなれる・・・。

そんな友だちとの絆を感じられる一冊です。

ポイント③絵本の完成度が高い

二木真希子さんはスタジオジブリでイラストレーターをされていて、その後フリーで活動されていたそうです。

動植物を描写を得意とされていた、とある通り、この絵本はまさにその動植物の描写が素晴らしいです。

絵を見るだけでお話が浮かんでくるくらいの説得力のある素敵なイラストです。

お話もピスケの心情を丁寧に追っていて自然と感情移入できます。

ぜひ手に取って読んでいただきたいです。

同シリーズには第一作目の『小さなピスケのはじめてのたび』があるので、この絵本が気に入ったらこちらもチェックしてみてくださいね。

まとめ

今回は【自分と相手の気持ちをかんがえる。心が育つ絵本】をテーマに5冊紹介しました。

気になる絵本はありましたか?

どれか1冊でもお気に入りの絵本に加えてもらえたら嬉しいです。

紹介された絵本をもう一度チェックしたい方はこちら

とんかちくんとのこぎりくん

けんかのきもち

アレクサンダとぜんまいねずみーともだちをみつけたねずみのはなしー

きみ、なにがすき?

ピスケのはじめての友だち

当ブログでは他にも色々な絵本を紹介しています。

どれもおすすめの絵本ですのでぜひ読んでみてください。

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