本を読むことの良さの一つは、絵本の中の出来事や登場人物の思いなどを自分のことのように感じられることですよね。
そうして感じたことがまるで本当に経験したかのように心に残って、心を広く強くしてくれるんだと思います。
本記事では【さぁでかけよう!ぼうけんする絵本】をテーマにして、司書資格を持つ保育士、弓子が、子どもに読み聞かせたい絵本を厳選して3冊選びました。
絵本を読んでお子さんと冒険の旅へでかけてみませんか?
さぁでかけよう!冒険する絵本3選
エルマーのぼうけん(おすすめの対象年齢・5歳~)
作 | ルース・スタイルス・ガネット |
絵 | ルース・クリスマン・ガネット |
訳 | わたなべ しげお |
出版社 | 福音館書店 |
初版年 | 1963年 |
大好きな一冊です!
ポイント①少年の冒険物語
この絵本の主人公は9歳の男の子、エルマーです。
親しくなったのらねこから「どうぶつ島」で荒々しい動物たちにとらわれている、かわいそうなりゅうの子どもの話を聞きます。
空を飛ぶことが夢だったエルマーは、りゅうの子を助けにいくことにしました。
(りゅうの背中にのせてもらってあわよくば飛んでみたい!と)
チューインガム、ももいろのぼうつきキャンデー2ダース、はぶらしとチューブ入りはみがき、ちがったいろのリボン7本、ふねにのっているあいだのしょくりょうなどなど・・・を、リュックに入れていざ出発!
機転を利かせて危機を切り抜けながら、りゅうを助けにいく――。
「エルマーのぼうけん」はそんな冒険物語です。
ポイント②ドキドキ、ハラハラする展開
この絵本の面白さはドキドキハラハラする展開だと思います。
この絵本は「本当に大丈夫かな・・・」と思うくらい、危機をリアルを感じることができます。
「クランベリこう」に着いたエルマーは、夜遅く、ぴょんぴょこいわを伝って「どうぶつ島」へ渡りました。
どうぶつ島には見張り役のようなねずみやイノシシがいて、何か異変はないか見張っています。
エルマーがどうぶつ島に到着したとき、イノシシはこうはなしています。
「ちかごろ、このしまに、しのびこんだやつがいるらしい。
そのしょうこが、三つある。
だい一は、ぴょんぴょこいわのそばの、ワフーの木の下に、
むいたばかりのみかんのかわがすててあった。
だい二は、ねずみのほうこくによれば、
『ぴょんぴょこいわから、だいぶはなれたところに、おかしないわあり。
しかし、くわしくしらべたところによれば、そのいわは、ゆくえふめいである。』
しかしだ、そのいわのあったらしきところに、もっとあたらしいみかんのかわあり、
これがだい三のしょうこである。
われらのしまには、みかんはならんから、だれかが、
ほかのしまからぴょんぴょこいわをつたって、やってきて、
このみかんをはこびこんだにちがいない。
これがだ、もしかすると、ねずみのほうこくした、おかしないわがあらわれたり、
きえたりすることと、かんけいあるかないか、どっちかであろう。」
どうぶつ島にはみかんの木は生えていない。
なのにみかんの皮が落ちていた。
これはみかん島からの侵入者だ!と気づくわけです。
そうはなしているのを聞いたエルマーは、次からはみかんの皮を捨てなくなります。
メインの動物たちのやりとりはもちろん面白いのですが、
こういった小さな動物たちとの攻防を丁寧に描いているからこそ、
エルマーの立ち位置が鮮明になって、危険に立ち向かっている土台がよく分かります。
その土台があるからこそ、メインの動物たちとのやりとりがよりドキドキハラハラして引き込まれるんだと思います。
ポイント③危険をきりぬけていくところにワクワクする!
やりとりが描かれている動物は、とら、さい、ライオン、ゴリラ、わになどです。
どの動物も容赦なく、エルマーに向かってきます。
でもエルマーは仲良くなったのらネコから、どうぶつ島の情報を聞いていました。
持ってきた道具と知恵を使って、着実に動物たちを攻略していく姿はとても爽快でとっても面白いです!
弓子は、とらにチューインガムをあげたところや、わにに棒付きキャンデーを加えさせたエピソードが本当に好きで、何回読んでもワクワクしてしまいます。
冒頭のねことの会話は少し長く感じられるかもしれません。
でもその後の展開は息をつかせないほどスピーディーにテンポ良く進んでいくので、5歳児も十分聞くことができると思います。
ぜひエルマーと冒険の旅に出かけてみてくださいね!
チムとゆうかんなせんちょうさん(おすすめの対象年齢・5歳~)
作 | エドワード・アンディゾーニ |
訳 | せた ていじ |
出版社 | 福音館書店 |
初出版 | 1963年(新版初版は2001年) |
新版は、作者であるアーディゾーニ生誕100年を記念して、本国イギリスで発刊されたシリーズの第一巻になります。
壮大な海の冒険へ!
ポイント①命がけの大冒険!
この絵本を初めて読んだとき、スケールの大きさに驚きました。
主人公のチムという5、6歳の少年が、生死のかかった冒険をしたからです。
この絵本を読んだとき、小2娘と年長息子は「怖い」と言いながら引き込まれるように聞いていました。
この絵本を見て「死ぬかもしれない」という体験をしたんだと思います。
そしてチムが無事に帰ってこれたことで、九死に一生を得たような体験もしたと思います。
壮大な冒険をしているところがおすすめです!
ポイント②一人前あつかいされることが嬉しい!
チムは、船乗りになりたくてたまらない少年です。
でもお父さん、お母さんに言うと、
「まだ ちいさすぎるよ。
もっともっと おおきくなって、おとなにならなくちゃだめ」
と言われてしまいました。
ある日、ボートのおじさんに
「おきに とまっている きせんまで、
わしの モーターボートに のせてってやろう」
と言われて、チムは大喜びでボートのおじさんを手伝って、汽船に乗り込みました。
そこで、
ぼくが かくれていれば、
ボートのおじさんは ぼくのことを わすれて、かえってしまうぞ
と考えたチム。
思惑通りに、チムは汽船に残ることができました。
船が大分走って、もう連れ戻されないと考えたチムは、船員のところへ出ていきました。
船員はチムを船長のところへ連れていきます。
船長はチムをみてとても怒りました。
おまえは、ただのりだから、そのぶんだけ はたらなければ いかん
と言って、甲板そうじをさせました。
お父さんとお母さんのように子ども扱いしないで、大人のように働いて対価を払うように伝えたんですね。
チムは頑張りました。
だって、チムは船乗りになりたくてたまらない少年だったからです。
どんなことであっても船乗りに関われることは、チムにとって喜びだったんだと思います。
そして、チムを子ども扱いせずに、大人達がチムを大人のように扱ってくれたことも、チムにとって、とてもとても嬉しいことだったのかもしれませんね。
ポイント③周りの大人達のあたたかいまなざしがいい
船の中には、船員やコック、舵手、二等航海士など、さまざまな大人がいます。
なかでもコックとチムは仲良しで、
チムが、じゃがいもを むいたり、りょうりばを そうじして
かたづけたりしてあげると、コックのほうでも、できたてほやほやの
ごちそうを たべさせてくれました。
と書かれています。
どの大人もチムをやさしく見守ってくれていることが分かるので、それが嬉しく感じます。
そして、この絵本の題名にもあるように、もう一人の主人公でもある船長は立派な人でした。
船がしずみそうなピンチにおちいり、チムが取り残されて泣いてしまったとき、船長はこう言いました。
「やあ、ぼうず、こっちへ こい。
なくんじゃない。
いさましくしろよ。
わたしたちは、うみのもくずと きえるんじゃ。
なみだなんかは やくに たたんぞ」
泣いていたチムは、船長のこの一言で、泣かずに、勇ましく、静かに最期をまっとうしようと思ったのです。
いい絵本には、主人公の周りに、船長のような人格者や、主人公を導いてくれるあたたかい大人がいるように感じます。
大人は絵本を読み聞かせながら、子どもとの関わり方を、絵本から学ぶことができるのかもしれませんね。
くんちゃんのだいりょこう(おすすめの対象年齢・4歳~)
文・絵 | ドロシー・マリノ |
訳 | 石井桃子 |
出版社 | 岩波書店 |
出版年 | 1986年 |
子どもを見守るまなざしが素敵です!
ポイント①思わず笑っちゃう!くんちゃんが可愛い
くんちゃんはこぐまの男の子。
お父さん、お母さんと暮らしています。
季節は冬。
お父さんが
「もう そろそろ ふゆごもりの きせつに なったね」
と話すところから、お話は始まります。
「さむくなってきたねぇ。」
くんちゃんが鳥に言うと、鳥は、
「ええ。だから、わたしたちは、みなみのくにへ とんでいくんです。」
と言いました。
くんちゃんは南の国に興味しんしん!
くんちゃんはお母さんに
「ぼくも みなみのくにへ いっていい?」
と聞きます。
するとお母さんは、
「とりたちは あたたかいところへ わたっていくのです。
でも、くまは ふゆは ねむるのです」
と言いました。
諦めきれないくんちゃんがもう一度頼むと、お父さんが
「やらせてみなさい」
と言いました。
「だが、くんちゃん、かえりみちを よくおぼえて おくんだよ。
あのおかのうえの 大きな まつの 木を めじるしにしてね」
と、つけくわえて。
お許しが出たくんちゃんは早速南の国へ向かって出発します!
果たしてくんちゃんは南の国へ行くことができたのか!?
この続きは読んでもらった方がいいので黙りますが、安心してください、とてもいいです(笑)
ぜひ絵本を読んで、くんちゃんのだいりょこうの行方を見守ってもらえたらと思います。
ポイント②くんちゃんを見守る大人達
くんちゃんのお父さんとお母さんは、とてもあたたかくくんちゃんを見守ってくれています。
それはくんちゃんが南の国へ行きたい!の返事にも現れています。
お母さんは冷静に状況を説明し、
お父さんはやらせてみなさい、と言い、帰るための目印を伝えました。
何を伝えて、何をやらせて、何に気をつけたらいいか。
細かく言わなくても、大切なポイントはちゃんと伝えています。
くんちゃんシリーズは、子どもを見守る大人のまなざしを学ぶことができる絵本だと思います。
ポイント③やさしい気持ちになれる!
この絵本を読み終えた後、とてもふんわりとしたやさしい気持ちになりました。
お父さん、お母さんの目線に立って、くんちゃんを見守っていたからかもしれません。
そしてくんちゃんの可愛らしさに癒やされたからかもしれません。
子どもも可愛い!と言ってくれるくんちゃんの可愛らしさにぜひ癒やされてくださいね。
まとめ
今回は【さぁでかけよう!ぼうけんする絵本】をテーマに3冊紹介しました。
気になる絵本はありましたか?
どれか1冊でも、お気に入りの絵本に加えてもらえたら嬉しいです。
当ブログでは他にも色々な絵本を紹介しています。
どれもおすすめの絵本ですので、読んでみてくださいね。
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